たんたんたんとした日々のこと

障害のある子供たちと過ごす日々のことを綴っています。

初夏のある日。

初夏のある日の出来事。

放課後デイサービスに到着するなり、彼は服を脱ぎ裸になりました。中3男子ですが、相撲部屋からスカウトが来そうな見事な体型です。

そして家から持って来たビーチバッグから、水着を取り出し着替えました。スイミングキャップにゴーグルも装着し準備万端です。

さて、ここでひとつ確認しておきたいことがあります。

本日、「プール」での活動予定はありません。

本日の活動予定は「散歩」ですよ。

この日は朝から初夏の青空が広がり、気温も上がっていました。最高のプール日和。…気持ちはわかります。

結局、この日彼は水着で散歩しました。もちろんスイミングキャップとゴーグルも装着してです。そこははずせません。Tシャツだけは大人の事情で着ていただきました。

散歩を終えると満足したのか、もとの服に着替えました。そしてゴロンと寝っころがると、いつものようにマッサージをせがんできました。

もちろん、いつものように関取の付き人のごとくマッサージをさせていただきましたよ。

初夏のある日の出来事でした。

彼の金メダル。

百メートルを9秒台で走る陸上選手のような速さで彼は走って行きました。

僕の制止する声は虚しく響きました。

彼の目指すゴールはボールに入ったホットケーキミックスの白い粉。

おやつの準備中でした。

彼はそこへ両手を真っ直ぐに伸ばした姿勢で滑り込んでいったのです。

彼もまた自閉症です。小学校高学年の男子。

彼から目を離してはいけません。この仕事を始めた頃、幾度となく言われました。

目は離してはいません。手を離しただけなんです。…言い訳にもなりません。

彼はよく動きます。とっても元気です。元気過ぎるほどに。すぎたるはなおおよばざるがごとし、ですよ。彼に教えてあげたい。

ホットケーキミックスで両手を真っ白にした彼は、わがじんせいにくいはなし、と言わんばかりのそれはそれは素敵な笑顔を浮かべていましたよ。

そうか、君は君の金メダルを取ったんだね…。

おめでとう、良かったね…。

それはそれとして。とりあえず、手を洗いに行こうか。

寝顔。

子供の寝顔というのは基本的には癒されるものだと思います。ただその寝顔に至るまでにいろいろな場合があるのです。

とある自閉症の中学生女子の場合。

放課後デイサービスでパート勤務しているので、平日は地元の支援学校まで子供たちを迎えにいきます。彼女はこの時たいてい眠そうにフラフラしています。歩きながら寝ちゃって地面に顔から突っ込んだこともあるので気が抜けません。

しかし無理に起こすと、「とっても」機嫌が悪くなります。

具体的にいうと、暴れます。とにかく暴れます。クルマのシートに座らせる時も両手両足がとんできます。メガネははぎ取られます。

しかし所詮相手は中学生女子。大人のちからを嘗めちゃいけませんよ。

ちょっと強引に手足を押さえながら座らせ、シートベルトをつけようとした、…その時でした。

彼女は手足での攻撃は無理とさとったのでしょう。そして残された手段として、口を使うことを思いついたのでしょう。

思いっきり、噛みつかれました。

肉がちぎれたかと思いましたよ。いたいよ。

噛みついてスッキリしたのか、その後はすぐに寝てしまいました。完全脱力状態で寝るので支えてないと倒れます。うっすら白眼をむいて、口をポカンと開けるといういつものスタイルで爆睡していました。

…子供の寝顔というのは基本的には癒されるものだと思います。

う○ちのこと。

仕事先の放課後デイサービスで子供のトイレ介助をしていました。子供といっても17才の高校生。彼は重度の自閉症です。

トイレの個室でふたり、彼は便座に座り、僕は彼の前にしゃがんでいました。いつものようにオシッコをするでもなく、おちんちんをいじったり、両手を顔の高さにあげてプラプラさせたり、服を噛んだり、でもニコニコと楽しそうな彼を見ていました。

そういえば先週はうんちを漏らして大変でした。パンツもズボンもうんちまみれで全部脱がして洗いました。でも当の本人は平気な顔でうんちを触って遊んでいました。それどころか、うんちを口に持っていこうとするから慌てて止めました。

彼の中ではうんちは汚いモノという概念はないのでしょう。

でも考えてみればうんちは元々身体の中にあったわけで、その時は汚いとは思わないのに外に出た途端に汚いモノと認識されます。身体の中にある方がむしろ汚いと感じても良いようなものなのに不思議です。

うんちが腸の中にあるのと、うんちを口から入れるのとそんなに差がないような気さえしてきます。

だからといってうんちを口に入れようとは、今のところ思わないですけど…。